監督室に呼び出された秋元と藤田。指揮官が抱いていた一抹の不安
カマタマーレ戦から一夜明けた3日はクールダウンと控え組の練習試合を行い、4日のオフをはさみ、首位に立つ9日の東京ヴェルディ戦へ向けて始動する5日の練習前に、秋元と藤田を監督室に呼んだ。
秋元に方針を伝えたうえで、一抹の不安も正直に打ち明けていた。ゴールキーパーよりはフィールドプレーヤーに、キャプテンを任せたい。ボランチとして攻守の要を担う菊地は、まさに適任でもあった。
ただ、菊地自身も昨年3月24日の練習中に右ひざ前十字じん帯を損傷して、シーズンの大半を棒に振っていた。全治までは約8ヶ月と、くしくも高山と同じ診断結果を突きつけられていた。
驚異的な回復を見せてセカンドステージの終盤戦には復帰したが、オフをへて始動した新チームでの練習や試合を見ながら、決して100パーセントのコンディションには映っていなかったのだろう。
「僕から『どうだ』と聞けば、シュン(菊地)は『やります』と絶対に言うだろうけど。ただ、状態を考えればあまりそういう(キャプテンという大役を)背負わせないほうがいいんじゃないかとも思ったし、一方で讃岐戦ではシュンがキャプテンマークを巻いていたので、陽太に変えることをシュンがどう思うか」
逡巡する指揮官の胸中を察したのだろう。秋元と藤田は「僕らがシュンと話をします」とその場での回答を保留して、練習開始へ準備していた菊地を呼び止めてメディカルルームへ向かった。
大宮アルディージャのジュニアユース、埼玉県立伊奈学園総合高校、そして日本体育大学を通じて、キャプテンという肩書とは無縁だった菊地も、秋元と藤田から言われる前から覚悟が決められないでいた。
「湘南で僕がキャプテンマークを巻いたときに、いいゲームができた思い出がないんですよ。2015シーズンに初めて、勝てばJ1残留が決まる山形戦で巻いたけど0‐1で負けてしまった。あのときは(永木)亮太君が累積警告で出場停止、(遠藤)航がけがで欠場したので自分が任されたんですけど。讃岐戦も負けたし、あまりいいイメージがなかったんですけど」