ワンサイドアタックへの固執。アルゼンチンの伝統的な考え方
このあたりはシメオネと同じアルゼンチン人、マルセロ・ビエルサ監督の影響がみられる。ただ、ワンサイドアタックに固執するのはボールを失ったときに守備がしやすいからだ。まず守備ありきは、アルゼンチンの伝統的な考え方でもある。
カラスコの起用やコレアの途中投入など、攻撃のテコ入れはしている。しかし軸足を守備に置き続けるかぎり、アトレティコの攻撃力が飛躍的に上がるとは考えにくい。
1-0でも先勝したことで、レスターとの第2戦はアトレティコに有利となった。レスターにボールを持たせてしまえば、得意のカウンターアタックのチャンスも増えるだろう。アウェイでも攻撃的にプレーしようとしたセビージャは、レスターのハイプレスとハイテンポに巻き込まれてしまったが、アトレティコにその心配はなさそうだ。
ただ、イングランドのチームはホームで強い。レスターの捨て身の攻撃に思わぬ失点を喫するかもしれない。アトレティコが得点しなければならなくなったとき、改めて真価が問われることになる。その可能性はさほど高くなさそうだけれども、レスターを下した後にもおそらく越えなければならないヤマは来るのではないか。
(文:西部謙司)
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