北朝鮮人選手とのプロ契約にイタリア国内からは批判も
ちなみに、こういった存在はハンだけではない。昨年にはMFチョウ・ソンヒョクがISMアカデミー経由でフィオレンティーナと契約寸前まで行った(その後諸事情で契約解除され現在は無所属)。またカリアリではハンに続いて、MFパク・ヨングァンがテスト生として練習している。
むろん現在の社会情勢にあって、イタリアのクラブが北朝鮮人選手とプロ契約を結ぶことへの批判はイタリア国内にも存在する。今回のハンとのユース契約に関してさえも、「個人とのプロ契約で得た金も国家に吸い上げられ、兵器製造に利用される恐れがあるから注視が必要」という旨の意見書が、イタリア民主党(中道左派)の国会議員2名から政府に提出されたという。
社会、政治的側面での是非はさておき、少なくとも確かなのは、ハンはしかるべきルートを通して実力を評価され、実戦の場に出てきたということだ。
翻って我が国日本はどうか。中田英寿がペルージャに移籍してから18年、セリエAのみならず日本人選手の欧州移籍は珍しくなくなった。日本国内の育成組織も、18年前とは比べものにならないほど充実していることだろう。だが欧州の舞台で通用する人材の発掘と、育成のノウハウの吸収については、今後も追求を続ける必要があるように思うのだが。
(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)
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