苦手な分野はほとんどない。唯一の弱点は絵を描くこと?
――公立なのにサポート体制を整えてくれたんだ。
「はい、ありがたかったです。校長先生は『丹羽くんのことを応援する。だけど、テストはテスト。点数を取ってくれと。授業を休み、成績も悪いのに進級させる特別扱いはできない。ほかの生徒に示しがつかないからね』とおっしゃいました。
アジアユースの予選から帰ってきて、次の日がテストという日もあったな。先生から教科書にマーカーを引いてもらい、遠征先のホテルで勉強してましたね」
――それで結果を出した。
「校長先生との約束でしたから。数学はトップに近かったことも。僕、理数系やったんです」
――丹羽選手、お手上げですよ。これは苦手という分野がひとつくらいありませんか?
「絵が描けない。絵心がびっくりするほどない。唯一の弱点かもしれません。サッカーのポジション争いでは、先輩を超えられると思わなければ超えられない。絵も同じで、描けると思わないと描けないと考えたんです。でも、どんだけ自分は描けると思い込んでも、とうとう描けるようにならなかった」
――美術か。
「手先は器用なほうで、工作は大丈夫だったんですけどね。僕は、絵が不得意なのも伸びしろやと思ってて、ピカソ的な先生のところで勉強したいなという考えがある」
――ピカソ的って。
「ああいう絵描きさんは、どういった観点で対象を見ているのか。僕とは見方が違うと思うんですね。見方さえ捉えられれば、書けるようになるかもしれん」
――どれ、さらっと1枚いってみましょうか。ドラえもん。
「ほんまヤバいっすよ。ドラえもんでしょ。ざっくりいきますね」
――どうぞ。
「こういう感じ。どうですか?」
――丹羽選手、なかなかいい仕事をしますね。モンスターだ。
「だから、言ったじゃないですか」
――タケコプターを頭に付けて。
「飛べるようにしときました」
――テレビに出てきたら、子ども泣きますね。こんなのが隣にいたら、腐りかけのゾンビでもシャンとして見える。
「伸びしろしかないですね」
(取材・文:海江田哲朗)