いま“BBC”の中で最も欠かすことができないベンゼマ
実際に12日の試合では、リベリーとロッベンにボールが渡る回数こそ多かったものの、チャンスはほとんど生まれていない。マドリーは“逆足ウィング”流行の先駆けになったコンビを封じるため、2人がボールを持った際は常に2人をマークにつけ、中へのカットインと縦への突破両方をケアする“囲い込み守備”を徹底していた。
そういった意味で起点となるチアゴ・アルカンタラやシャビ・アロンソを警戒しつつ、サイドの守備にも顔を出してピッチを縦横無尽に走り回ったカゼミーロ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロースの3人の働きは称賛されてしかるべきだろう。
マドリーにとってもう1人の殊勲者は、2ゴールを挙げてUEFA主催のクラブカップ戦100得点を達成したC・ロナウドではなく、カリム・ベンゼマだった。
ベイルとC・ロナウドとで構成する“BBC”の中で、「BとCを生かすもう1人の存在」としてベンゼマが傑出していることを見事な働きで証明した。最前線のストライカーの位置を起点に、元のポジションを捨てて積極的なランニングでサイドに開くことで、ベイルやC・ロナウドが中央へ走りこむスペースを作る。地味ではあったが相手にとってはボディブローのように効いてくる確実なチャンスメイクだった。
後半開始直後の同点ゴールの場面、右サイドヘボールが出た瞬間のベンゼマとC・ロナウドは同じレーンを走ってゴール前に入ろうとしていた。そこで前者は急ブレーキをかける。これによってマークについていた相手DFもストップ。ゴール前にはぽっかりとエアポケットができ、そのスペースに走り込んだC・ロナウドがやすやすとゴールを陥れた。
さらにマドリーの2点目の場面、マルコ・アセンシオがボールを持って前を向いた瞬間、ベンゼマはすっと後ろに下がった。それにより相手のディフェンスラインの意識が前を向く。その一瞬を見逃さなかったアセンシオが、低くて鋭いボールをそのDFたちの背後に潜んでいたC・ロナウドめがけて蹴り、ゴールが生まれた。
自らゴールを決めるだけでなく、味方のパワーを最大限に生かす能力を備えたマドリーの9番は、記録に残らない働きでチームを勝利に導いた。いま“BBC”の中で最も欠かすことができないのはベンゼマだろう。