暗い雰囲気を一掃した香川のゴール。アウェイへの2ndレグへ望み
後半に入って、そんな陰鬱な空気に抵抗したのは、香川真司だった。献身的に守備もこなしながら、バイタルエリアでも不用意にボールを失わず、前線では攻撃を牽引した。香川も昨日の事件には巻き込まれている。だからこそ、スタジアムに落とす暗い影を一掃するために、そして仲間のバルトラのために、気を吐き続けたかのようだった。
57分には、オーバメヤンが落としたボールを、GKの目の前でファーのデンベレにパス。デンベレが押し込んで1点を返す。ここからドルトムントの猛攻が始まった。モナコを押し込み続ける。しかし、なかなか点を奪えないでいると、ショート・カウンターからムバッペに3点目を決められてしまう。2ndレグを控えて、モナコにアウェイゴールを3点献上するという、絶望的な状況。
しかし香川が、希望を繋いだ。84分、シャヒンからの浮き玉のパスから、香川が、エリア内でエメルソンをシュートフェイントで交わすと、左足で鮮やかにゴール。2ndレグに向けて、ドルトムントを支援する誰もが勇気を保てる一撃だった。
反撃は及ばす、ドルトムントはそのまま2-3で敗れた。そして試合後には、いつものようにファンの拍手がスタジアムを包んだ。そして、そのいつものような拍手こそが、異常事態の直後では、何よりの救いだったのだ。
(取材・文:本田千尋【ドルトムント】)
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