バルサに“絶対的リード”は存在せず。サポーターも不敵な笑み
このように前半で2点のリードを奪ったユベントスは、後半も狡猾に戦った。後半10分にはCKのチャンスを着実に活かして追加点、そして堅い守備でバルセロナにゴールを許さない。そしてそこにも、戦術的な守備プランがきちんと実行されていた。前半のようなハイプレスの持続はさすがに難しくポゼッションは大幅に譲ったが、その分集中力の高い守備を披露した。
ボールは持たれてもいい。その代わり、ゴール前のスペースは絶対に空けない。サイドの守備がルーズだった相手とは対照的に、マンジュキッチやクアドラードも勤勉に守備に戻り、中盤に人数を掛ける。そしてメッシが下がり目のポジションを取った時も、DFはむやみにくっついて行かず、最終ラインの枚数を保って人を余らせる戦略をとった。
中盤で当たりに行き、個人技でマークを外されても、残っていた後方の選手がボールを取る。このように精密に準備された守備ブロックは、バルサの攻撃から精度を奪った。後半に打たれたシュートは9本、だが実に7本が枠外だった。
内容も結果も申し分ない形で得た1stレグの3-0。もっともバルサ相手には絶対的なリードと言えないのは、つい先日世に知らされた通りだ。試合後、両手で「6」のサインを作りながら、不敵に笑うバルセロナサポーターの姿が、ユベントス・スタジアムの場内ビジョンに大写しになった。1stレグで0-4とされながら、6-1で準々決勝をもぎ取ったパリ・サンジェルマン戦を指してのことだ。
「ゴールを奪いに行き、攻撃的な姿勢を保つことが重要だ」とアッレグリ監督は強調した。慎重に引きすぎるとプレスの圧力を弱め、逆説的に守備の上でも良くない結果をもたらす場合がある。隙を見せれば容易に大差をひっくり返す力のある相手に、ユーベはどういうアプローチでリードを守るのか。2ndレグも、戦術的に見所は多そうだ。
(取材・文:神尾光臣【トリノ】)
【了】