見誤った選手の適正。リスクも大きい自己哲学への固執
しかし、グアルディオラにも猛省すべき点はある。ポゼッションにこだわりすぎて、各選手の適性を見誤った。最後尾からつなげる選手はいない。期待のジョン・ストーンズはまだひ弱で、最終ラインの軸になるはずだったバンサン・コンパニは、相変わらずケガとの戦いに明け暮れた。二コラス・オタメンディとアレクサンデル・コラロフも対人能力は高いものの、フィードがアバウトすぎる。
そしてサイドバックもフィリップ・ラームやダビド・アラバ(ともにバイエルン)のように、チームがボールを保持した際は中盤インサイドに入り、ビルドアップの一翼を担う戦術理解度は有していなかった。それでもグアルディオラは理想を追求し、4月8日の段階で首位チェルシーに14ポイントもの大差をつけられている。現有戦力に満足しているのなら、現有戦力に適したプランBを練り上げるべきだった。現状把握は指揮官の最重要任務である。
グアルディオラとともに、強化担当部門も猛省しなくてはならない。『アブダビ・ユナイテッドグループ』が買収した後、補強には疑問符がつく。特にアタッカーだ。ジョー、ロビーニョ、クレイグ・ベラミー、エマニュエル・アデバヨル、ロケ・サンタクルス、マリオ・バロテッリ、ステバン・ヨベティッチ、アルバロ・ネグレド、ウィルフレド・ボニと失敗の連続だ。セルヒオ・アグエロ、ラヒム・スターリング、レロイ・ザネ、ガブリエル・ジェズスの成功に満足し、黒歴史を忘れると痛い目に遭う。
グアルディオラの一年目は失敗に終わった。FAカップ優勝の可能性が残されているとはいえ、チャンピオンズリーグはラウンド16で散り、プレミアリーグは3~4位が精いっぱいだ。したがって8月12日開幕予定の2017/18シーズンは、メジャー大会で少なくとも最終盤まで優勝戦線に残り、真の名門へと歩みを進めなくてはならない。
そのためにはペップと補強部門が強化策をすり合わせる必要がある。自己哲学への固執はリスクも大きい。基本プランに柔軟性を持たせ、選手層の拡充を図るべきだろう。プレミアリーグを闘う以上、ストロングヘッダーの獲得は優先課題のひとつだ。
(文:粕谷秀樹)
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