憧れだった中村俊輔。プロでは競争相手に
チームが勝利した後にもかかわらず、表情に悔しさをにじませてミックスゾーンに現れた選手がいた。
天野純。
横浜F・マリノスで今季から14番を背負う25歳のMF。昨季までは絶対的な主力としての地位を築けていなかったが、今季は開幕戦から第6節まで全試合で先発起用されている。
もっとも昨季後半戦はレギュラーとして存在感を高め、攻撃面で良質なアクセントになっていた。中村俊輔が負傷で長期離脱を強いられる中でセットプレーのキッカーも務めるなど飛躍のきっかけをつかんだ1年だった。
その中村俊輔は、横浜FMの下部組織で育ち、同じ左利きの天野にとって憧れの存在だった。そして順天堂大学からプロとして横浜FMの選手になってからは、越えなければならない存在になった。
ただ、目の前にそびえる壁は想像以上に高かった。天野は中村俊輔がJリーグMVPを受賞した翌年の2014年に大卒選手としてプロ契約。当然トップ下のポジションを狙ったが、競争相手が前年度にリーグで最高の評価を受けた選手という事実は重く、天野にリーグ戦で出場機会が訪れることはなかった。
迎えた2015年、天野が主戦場とする2列目にブラジルU-21代表歴を持つアデミウソンが加入。中村俊輔は負傷離脱する時期もあったが、その穴はより守備的な三門雄大が務めることが多く、プロ2年目のレフティーには厳しい1年となった。結局リーグ戦出場は6試合のみ。またも壁を突き破ることはできなかった。
2016年、後半戦になって徐々に出場機会をつかみ、念願のトップ下に入る機会が増えた。それでもチーム自体の調子が上がらず、リーグ戦でのゴールはなし。プロ3年目もブレイクしきれないまま終わるかと思われた12月に転機が訪れる。