若手の成長が強豪復活の鍵? 新経営陣の方針が重要に
この現実を受け容れたのか、サポーターたちも少し変わった印象を受ける。結果に厳しく、それこそボリエッロやデ・シーリオ、そしてステファン・エル・シャラウィ(現ローマ)らにも時に容赦なくブーイングが飛んでいたが、今は若手を積極的に応援するような空気がスタジアムにも出てきた。
今週中には、紆余曲折は経たものの中国資本への経営譲渡が完了する見通しだ。将来のベースとなる若手は揃えたという点で、現経営陣は良い置き土産を次世代に残したとも言える。近年は苦戦を続けたミランだが、今いる10代や20代前半の若手選手が成長すれば、強豪復活につながるのではないだろうか。
――しかし、有望な若手の存在だけをとって楽観視するにはまだ早い。当然ながら、戦力として彼らの価値をどう活かすか、そしてチームとしてどういう成績を目標とするかどうかは、新経営陣の舵取り次第だからだ。
ドンナルンマにはサポーターの期待も大きいが、引き留められるかは分からない。「彼には偉大なミランがふさわしいのではない。偉大なチームがふさわしいのだ」と代理人のミーノ・ライオラは待遇次第での移籍もちらつかせている。その希望を満たすには、ドンナルンマ自身の契約にもチームとしての補強にもそれなりの額を費やさなければならなくなるわけだが、新経営陣にそれは可能なのか。
現在ミランの下部組織からは、アレッサンドロ・プリッザリという才能溢れるGKが新たに出てきている。「長身だし、足元の技術はドンナルンマよりも高いともっぱらの評判。ドンナルンマを放出した場合クラブは彼をトップチームのGKに推すことも考えている」とフェデーレ記者は語るが、果たしてどうなるか。
(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)
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