「そうやって1年通してレベルが上がればいい」(中村俊輔)
今シーズン初勝利を掴み、自身も直接FKを決めた大宮アルディージャ戦も、率先して汗をかくレフティーの姿があった。試合終盤、自陣深い位置で相手の攻撃を食い止めている。我を通して味方を引っ張るのではなく、チームの駒の一人として勝利のために最善のプレーを選択した。
走行距離は毎試合チームトップクラスと目を見張る活動量である。中村俊輔は、プレーや姿勢で仲間を奮い立たせているのだ。
理想だけで勝ち点を積み重ねられるなら、それに越したことはない。しかし、それができるのはリーグ優勝を狙うような強豪だけで、磐田はまだそのレベルには達していない。上には上がいる、という現実をこれからも突きつけられるだろう。
だからといって、現状がネガティブかといえばそれは違う。
「各々反省してコミュニケーションを取って、そうやって1年通してレベルが上がればいい」
日産スタジアムのミックスゾーンで、中村俊輔はこう話した。現実を直視し互いに高め合う作業を繰り返した先に、チームとしての成長が待っている。そんな感触を古巣戦でも少なからず得たはずだ。
指揮官の言う「俊輔ダービー」は悔しい結果に終わった。勝ち点は掴めなかったものの、手ぶらで帰ったわけでもなかった。単なる34分の1ではないゲームを経て、サックスブルーは次なる戦いへ準備を進めている。
(取材・文:青木務)
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