「俊さんが僕らの変化を感じてくれればいい」
自らの意志で中村俊輔の“10番”を受け継ぎ、エリク・モンバエルツ監督からはキャプテンを任された。「キャプテンになった自覚はないわけじゃないけど、僕はチームがどうやったら強くなるかを考えて行動しているだけ」と齋藤は語るが、背負うものの大きさや立場が変わったことで潜在的な意識の部分に変化があったことは確かだろう。
「戦う姿勢。僕が若いころにずっと教えられていたものなので、マツさん(松田直樹)とか河合竜二さん(現札幌)とかね。そういうものを今の若い子たちはあまり知らないので、僕らが見せていかなきゃいけないかなと思う」
こういった何気ない一言からも、齋藤自身の立ち位置やサッカーへの向き合い方がこれまでと変わってきていることは明らかだ。中村俊輔も「アイツはキラキラしたものを持っているから」と自分の“10番”を受け継いだ齋藤への期待を語る。
「去年からいろいろ思っていたことはあったけど、僕ひとりで考えているというよりは副キャプテンのボンバー(中澤佑二)だったり、(飯倉)大樹くんだったり、(栗原)勇蔵くんだったり、喜田(拓也)だったり、マチくん(中町公祐)だったり、みんなと話しをしてこうやっていこうと言った結果ああいうものが生まれている。本当に僕だけじゃないので。本当にいいチームになれるかなと思います」
齋藤が言うように、中村俊輔去りし後の横浜FMは非常に若く、発展途上のチームである。リーダーとしての自覚が芽生えた新たな“10番”を先頭に、経験豊富な心強いベテランたちがチームを支え、20代前半の若い選手たちが躍動する。
「俊さんが何か僕らの変化を感じてくれればいいですけど」
実際に対戦した中村俊輔は、古巣の変化とかつての戦友たちからのメッセージを直に感じ取ったはずだ。注目された“新旧10番対決”は、齋藤に軍配が上がった。それはクラブ25周年の節目に、横浜FMに新たな時代が到来したことを告げる歴史の新たな1ページとなった。
トリコロールの戦士たちは新時代の“10番”とともに、未来へと突き進んでいく。
(取材・文:舩木渉)
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