“10番”中村俊輔が「帰ってきた」。サックスブルーをまとって
試合を決めたのは“10番”だった。
2017年4月8日。日産スタジアムに中村俊輔が帰ってくることで注目が集まっていた、明治安田生命J1リーグ第6節の横浜F・マリノス対ジュビロ磐田が行われた。
昨季まで10番を背負い、長きにわたって横浜FMの象徴だった中村俊輔に「帰ってくる」という表現を使うことにはまだ違和感がある。だが試合が終わった頃には、これからは「帰ってくる」でいい…そんな感覚があった。
そう考えるに至ったのは、やはり中村俊輔から“10番”を受け継いだ齋藤学の輝きを目の当たりにしたからに違いない。横浜FMの新たな時代の先頭に立つドリブラーは、サックスブルーの戦闘服をまとった先人にプレーと結果で自らの成長を示した。
「僕はずっと背中を見て育ってきたので、そういう選手と試合をするのは不思議な感覚でした」
中村俊輔と対峙するにあたって、齋藤は「マリノス対ジュビロだ」とチームメイトたちに言い続けてきたという。だが、ただのリーグ戦の1試合と口で言うことはできても偉大な先輩との対戦に無関心であるのは難しい。本人もそのことは十分に理解していた。
それでもキャプテンになった齋藤は、これまで以上にチームの勝利だけに集中することができていた。なかなか結果が出ない中で、今週初めには選手だけでミーティングを行い、意識の共有を図った。これは齋藤がチームに伝えたいことを伝える場でもあった。
「セレッソ戦の後に副キャプテン何人かと喋って、『副キャプテンたちだけで一回声を出し合うのもありかな』って言っていたんですけど、それよりも僕はみんなで一回意識の共有をしたかった。オフの間ずっと何を言うか考えていて、中身は言わないですけど、それでもいい話し合いをできたから練習のみんなの姿勢が変わったと思う」
ミーティングの成果は磐田戦にしっかりと反映された。「僕がアシストしたことよりも、一人ひとりが走りきって、球際で戦って、最後の最後まで戦う姿勢を見失わなかったことが僕は嬉しい」と齋藤は語る。
リーグ開幕戦から2連勝を飾ったものの、その後は公式戦4試合連続で勝利なし。明らかに流れの悪い中、磐田戦が今後につながる大きな勝ち点3になったことは間違いない。過去との決別も含めて。