ペップのサッカーを実現するためのビルドアップ能力
アザールの先制点は、シティの虚を突くものだった。アスピリクエタがドリブルで持ち上がり、右へ開いたペドロへパス。そのままアスピリクエタはボックス内へインナーラップしてペドロのパスを受けてプルバック、フリーになっていたアザールが決めている。
この一連の攻撃でアスピリクエタは終始フリーだった。フリーで持ち上がり、フリーで走り込んでパスを受けた。アスピリクエタに侵入されたので、シティのディフェンスラインは下げられ、アザールもフリーになった。
アスピリクエタが出てきて、ボールをサイドへ展開されたところまでは仕方がない。その後にデルフとフェルナンジーニョが後手になってしまった。それだけチェルシーの攻撃が速かったのだが、シティの守備の修正もやや緩慢だった。
しかし、その後はシティが主導権を握っている。先制したチェルシーが引いたこともあるが、ジエゴ・コスタの脇を使いたい放題でビルドアップ出来たからだ。チェルシーの2シャドーはシティの2ボランチとマッチアップしているが、引くときには最終的にはサイドのスペースを埋める。
ジエゴ・コスタの斜め後方のスペースへ引いてパスを受けようとするシティのボランチに対して深追いはしにくい。シティはボランチを起点にチェルシーの守備網をはがしはじめた。
ただ、チェルシーがハイプレスを仕掛けてきたときのGKからのビルドアップには難があり、そのときは簡単に失っている。グアルディオラ監督のサッカーを実現するにはGKとDFのビルドアップ能力が明らかに不足しており、この点が今季いまひとつ機能しきれなかった要因である。
とはいえ、チェルシーのハイプレスもジエゴ・コスタの機動力がないために頻度はさほどでもなく、シティは攻め込めていた。アグエロの同点ゴールは、チェルシーのGKクルトワが直接シルバにボールを渡してしまうミスからだが、流れはシティに傾いていた。