9つのタイトルと2億ユーロ近い黒字
モンチが1年間の休養を取るなどということはない。そんなことは不可能だからだ。もう随分前から彼は携帯電話の電源を切ってはいないし、15日以上の休暇を取ることもない。
友人たちや家族、復活祭の聖週間やカディスのカーニバルは彼がバランスを取る助けとなっているが、それを離れれば1日24時間セビージャだけを呼吸している。その姿は現役時代よりも今のほうがよっぽどGKらしい。ジムに通うことも彼の逃避手段のひとつだ。舞台裏の人物であり、セビージャの8554番目のソシオでもある。
彼の残す数字こそが、モンチを同業者たちの中でトップたらしめている。彼ほど小さなリソースで大きな成果を残せるものはいない。
チームがプリメーラ・ディビシオンに復帰するため味わった苦しみをモンチは決して忘れない。緊張感は張り詰めていた。たとえば、昇格が懸かる最終節のマラガ対セビージャ戦ではコインを投げつけられピッチに崩れ落ちたこともあった。
それでもチームは昇格を果たし、それが全ての始まりとなった。買うことと同じくらい売ることも重要な戦争経済の中で、期限付きでの選手獲得や下部組織に賭けることを通して、セビージャの離陸が始まった。
17年間が経過し、セビージャは16回の決勝を戦って9つのタイトルを手にしてきた。UEFAカップ優勝が2回、ヨーロッパリーグ優勝が3回、コパ・デル・レイ優勝が2回、欧州スーパーカップとスペイン・スーパーカップ獲得が各1回。それが、モンチがスポーツディレクターとして残した成果だ。
そして、2億ユーロ近い黒字。セビージャにとって驚異的な時期となったこの21世紀を通して、多くの選手たちや監督たちが入れ替わり、会長の交代さえもあったが、モンチという存在は不動だった。
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