相手の勢いを削ぐ中村俊輔のセットプレー
第4節を終えた時点で、磐田は無得点試合が3度もあった。ダービー直前の紅白戦では控え組に圧倒され、翻弄された。だが蓋を開けてみれば3-1で勝利だ。
改めて痛感させられたのは、先制点の重みだろう。試合開始早々にリードを奪ったことで、チームに落ち着きが生まれた。その後は攻め込まれる時間もあったが、守備面での自信を深めるサックスブルーは慌てることなく対応し、2点目、3点目に繋げていった。
相手の勢いを削ぎ、意気消沈させたのは中村俊輔の左足だった。本人は中で合わせてくれた味方への信頼感を口にしたが、『走り込めば絶対にいいボールが来る』と周囲に信じさせるだけのキックであることを日々、証明している。
磐田が勝利した2試合は、前半序盤に先制点が生まれている。いずれもレフティーのセットプレーである。
静岡ダービーが非常に重要な対戦だったことは間違いなく、大一番での歓喜は選手たちを安堵させ、次への活力を与えたことだろう。4万人以上のサポーターを前に選手たちはいつも以上に気合いが入っており、勝利のみが求められるプレッシャーにも打ち克った。今後はカップ戦も入るため多くの試合をこなさなければならない。連戦へ向かっていく上で、この山場を勝利で終えた価値は大きい。
一方で、ダービーという“ストーリー”を抜きにして考えた時、浮かび上がるのはJ1復帰初年度のチームにしっかり勝てたという事実だ。磐田が昨シーズンを越える成績を狙うなら、上位グループ以外のチームからのポイント奪取は必須である。その意味でも今節の勝利は収穫となった。
痺れる試合をモノにしたチームがやるべきは、好パフォーマンスの維持だ。次節、サックスブルーは日産スタジアムで横浜F・マリノスと対戦する。
(取材・文:青木務)
【了】