ダービーで証明した実力。ドローにも手応えが
ダービーでのアシスト、香川の語る手応え。
「ハーフタイムの後っていうのは特に、立ち上がりっていうのは、色々なものが起こり得るので、その中で先制点が取れたことはすごくよかったです」
さらに58分。ヴァイグルからパスを受けた香川は、反転すると、左前方を走るオーバメヤンにスルーパス。46分の場面と似たような形だ。オーバメヤンの折り返しは、DFにクリアされてデンベレには届かなかったが、香川の振るう攻撃のタクトは、シャルケの守備に横たわる亀裂を、確実に大きなものにしていった。
しかし決めるべき時に決めきらないと、しっぺ返しを食らう。トーマス・トゥヘル監督の言う「究極的にエモーショナルでインテンシティの高いゲーム」=レヴィア・ダービーのような試合では、なおのことだった。
77分。エリア内でゴレツカが落としたボールを、ティロ・ケーラーが突き刺す。痛恨の失点だった。
ゴンサロ・カストロは悔恨する。
「僕らは追加点を奪うチャンスを逃した。そしてゲームを殺してしまった」
香川は落胆する。
「まぁ、まぁ…勝つべき内容だったので。相手の怖さ…セットプレーとその後の流れでやられましたけど、それしかなかったので。そういうところはすごく残念ですね。まあ、そりゃ悔しいですし。ダービーですから。勝ちたかったですね」
痛み分けに終わった通算171度目のレヴィア・ダービー。シャルケにもドルトムントにも“英雄”は生まれなかった。しかしそんな中、万全とは言い難かったコンディションでも、香川は確かな戦術眼でチームの攻撃を牽引した。
何よりファンのために戦った香川。
「ダービーは特にファンにとって大事。クラブにとってもそうですけど、それをピッチに入れば感じますし、雰囲気もいつもと違う中でやれるので、だからこそ勝ちたかったなと思います」
その想いは、敵地フェルティンス・アレーナに駆け付けた黄色い一角に、伝わったはずだ。
(取材・文:本田千尋【ゲルゼンキルヘン】)
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