ジャパネットの支援で明るい兆し。問題解決はこれからが本番
だが支援の手は思いがけないところから上がる。3月6日に英会話大手NOVAホールディングス(東京)が、子ども向けのサッカー教室を展開するためサッカー界での人脈づくりを進めたいと、クラブへ5億出資を打診。7日の会見で会長の荒木も県内企業を最優先としながらも、受け入に前向きな姿勢を示したのである。
この予想外の状況下で、クラブへの支援を決断したジャパネットは10日に東京で会見し、株式を100%取得し3年で10億円以上を支援する意思を表明するのだが、その2時間後に開催された会見で荒木は、一刻も早い資金調達とJリーグへの報告するための時間的な制約を理由に、NOVAの支援受託を発表。
しかし、6日に県内最優先と公表しながら、地元企業の打診を即日に退けたことへの、株主・スポンサー・サポーターから反響は大きかった。県からも問い合わせがあったとされる中、翌日の会見に憔悴した顔で出席した荒木は、ホワイトナイトを迎えるには似つかわしくない大粒の涙をこぼしながら、ジャパネットの支援受け入れへの転換を表明した。
3月21日に開催された株主への説明会は、ジャパネットによる100%の株式取得の方針に大きな異論も出ず滞りなく進んだという。
その後の記者会見でも「やる以上は腹をくくってやる」と明前社長が再建への覚悟をのぞかせれば、旭人社長も「J1やACLは夢。だが、それ以上に仲間と会い、スタジアムで楽しめる週末を作ることが大事」と理念を語り、再建へ向けた上々のスタートを感じさせるものでもあった。
現在、ジャパネットはクラブについての情報を収集、整理しながら順調に株式の譲渡を進めているが、ジャパネットとして初のM&Aである点や、スポーツビジネスの特異性を思えば、今後の経営や運営の道は平坦なものではないだろう。
昨年からの1年だけで3年以上勤務していたスタッフが大量にクラブを去っており、整骨院をはじめとするコンプライアンスや、クラブガバナンスの問題も未だ外部調査中だ。ジャパネットの支援により明るい兆しが見えてきた長崎だが、山積する問題の解決という大仕事はこれからが本番なのである。
(取材・文:藤原裕久)
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