チームの活躍とは裏腹に…大きくなっていった予算の穴
3月21日、3月のJリーグ理事会を終えた村井満チェアマンは、前日にジャパネットホールディングス(長崎県佐世保市)がV・ファーレン長崎の株式を100%取得する意向を示したことにふれ、他の株主が了承する場合は株式譲渡を認める方針を明らかにした。
2月8日に突然、赤字決算見込みが発表されてから41日、状況・方針・情報が錯綜していた長崎の方向性がようやく定まったわけだが、これまで2年連続黒字を計上していた長崎が、突如1億2000万の赤字と、約3億もの累積赤字を出す事態に陥ったのはなぜか。そこには長崎の抱えるいくつかの問題点が潜んでいた。
親会社を持たない地方クラブの例にもれず、強い財務基盤を持たない長崎は、発足以来、常に経営難に悩まされてきた。
当時を知る関係者によれば、その中で行なわれてきたのが、経営陣による「自腹での資金負担」、本来は翌年に計上されるべき予算を今季分に組み込む「先食い」、スポンサーや株主による「決算前の支援や増資」といった手法であり、特にJリーグ参入後は、チームの活躍と裏腹に「先食い」による予算の穴は大きくなっていったという。
無論、この状況を軽視していた者はいない。別の関係者は、2年連続の黒字を達成したことで、2016年度は債務超過にならない範囲での赤字を計上して予算の穴を埋め、数年かけて健全な状態へ持っていく方針だったと語る。
事実、赤字決算発表後にクラブの財務担当者も「9月の時点で赤字決算だと分かっていたので、債務超過にならない範囲での軟着陸を図ってきた」と語っている。だが2016年の長崎は、深刻なコンプライアンス、ガバナンス問題に直面し、軟着陸できる状態ではなくなっていたのである。