フラストレーションがたまる流れを一掃した一撃
舞台を埼玉スタジアムに移した28日のタイ戦では、開始8分のMF香川真司(ボルシア・ドルトムント)の先制弾、19分のFW岡崎慎司(レスター・シティ)の史上3人目となる国際Aマッチ通算50点目を立て続けにアシストする。
特に岡崎のゴールを導いたアーリークロスは、走り込んできた岡崎がジャンプし、最後に首を伸ばしたニアサイドのスペースを寸分の狂いもなく狙ったコントロール、スピード、そして高さのすべてをハイレベルで満たすものだった。そして、後半12分にクライマックスが訪れる。
酒井宏のスローインを受けて上手く前を向き、右サイドからペナルティーエリア付近に侵入。目の前が空いた瞬間に迷うことなく左足を振り抜くと、強烈な弾道をゴールの右隅へと突き刺した。
「意外とフリーだったし、あの状況ですごく落ち着いていたので、シュートを打とうと思いました。ニアというか内側を狙ったんですけど、あそこまで上手くいくとは思わなかった」
2点をリードしてから信じられないようなパスミスが続き、前に出てくるタイの姿勢とあいまって幾度となくピンチを招いていた。フラストレーションがたまるような悪い流れを一掃する豪快な一撃に、寡黙な男は珍しく雄叫びをあげて、右腕を夜空へ突きあげた。
「ホームでは初ゴールだったので、うれしくて」
貪欲な思いが、成長を加速させている。オマーン代表との国際親善試合、サウジアラビア代表とのワールドカップ・アジア最終予選に臨んだ昨年11月シリーズから、ハリルジャパンに初招集された。
もっとも、ポジションはFW本田圭佑(ACミラン)が長く務めてきた右サイド。多少なりとも覚えた違和感を消し去っていくことが、自分にとってプラスになると信じて取り組んできた。
「右サイドというのはチームであまりやっていないので、その意味ではここ(日本代表)でやれることで、もっと幅を広げられるのかなと。自分のプレーが上手くいけば、最後は必ずゴールがついてくると思っているので、ゴールの前段階のプレーをしっかりやっていくことが大事かなと。
去年の11月に右サイドで出たときは、いい形で終われなかった。それに比べたら少しやれるかな、フィットしてきているかな、という実感はわいてきましたけど。でも、もっともっとやれると思う。崩しの部分もパス回しの部分ももっとよくなると思し、改善点はいろいろとあると思う」