サポーターから大喝采が送られたデビュー戦
テネリフェにとって重要な一戦だった。1部リーグから今季降格してきたチームであり、昇格争いの直接のライバルとなるヘタフェがテネリフェをホームに迎えた試合だ。柴崎にとってはスペインのサッカーを経験する初の機会となったが、試合の展開や対戦相手の要求するプレーはデビューに適したものとはならず、1分間もプレーすることはなかった。
元々デビューが見込まれていたのは3月19日、レウスが本拠地エリオドロ・ロドリゲス・ロペスを訪れる試合であり、実際にそうなった。スコアが0-1の状態で、前線の攻撃的な選手と中盤を繋げるため、テネリフェはボールの流動性を高める必要に迫られていた。
指揮官の切ったカードは柴崎だ。スペインのセグンダ・ディビシオン(2部)は、クオリティーや技術よりもフィジカルが何倍もの優位性を持つことが特徴的なリーグだとよく言われる。だが優れた技術を備える選手が、その長所で肉体的ハンデをカバーするような例ももちろんないわけではない。
デビューの日を迎えた柴崎がピッチに出ると、テネリフェのサポーターからは耳をつんざくような大喝采が送られた。最初のボールタッチに対しても大きな歓声が上がった。ついに公式戦のピッチ上で彼の姿を目にすることができてファンは喜んでいた。
柴崎は個性を発揮し、常にボールを受けようと顔を出していたし、チームメイトたちに動きを指示する場面もあった。ボールを相手にとって危険な位置へ運ぶことを常に試みようとしていた。だが試合の行方を変えることはできず、結果はテネリフェの敗戦に終わった。
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