28歳の苦労人を奮い立たせたエール
尊敬する2人の大先輩から送られた檄が、28歳の苦労人をさらに奮い立たせる。ひとつは所属するガンバ大阪のキャプテン、MF遠藤保仁から届いた無料通話アプリ『LINE』によるメッセージだった。
敵地アル・アインで難敵UAE(アラブ首長国連邦)代表との大一番に臨む直前。約1年7ヶ月ぶりに代表復帰を果たしていたMF倉田秋のスマートフォンが、小刻みに震えた。
「頑張れよ」
プレースタイルと同じく、シンプルでいっさいの無駄が省かれた文面。もっとも、これだけで十分だった。5時間もの時差と国境とを超えて届いたエールに、倉田は笑顔を浮かべる。
「ヤット(遠藤)さんらしく単純明快だったけど、すごく珍しいことなので」
ハッザーア・ビン・ザーイド・スタジアムに到着し、足を踏み入れたロッカールーム。用意されていた青いユニフォームの背中には自身の名前と、遠藤の象徴でもあった「7番」が刻まれていた。
「ヤットさんがずっとつけていた番号なので。ヤットさんも代表復帰をあきらめていないはずだし、何とも言えない感じですけど、やっぱり同じチームの自分が上手いこと引き継いでいけたらいいかなと」
寡黙な男だけに口を突く言葉は重く、決意が伝わってくる。2点をリードして迎えた後半26分。最初の交代のカードとして、MF香川真司(ボルシア・ドルトムント)に代わって投入された。