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Jリーグ 8年前

齋藤学“無双”の裏で見えた新生マリノスの課題。若きトリコロールが秘める無限の可能性

チームの象徴だった司令塔・中村俊輔が移籍するなど、このオフにチームの陣容が大きく変わった横浜F・マリノス。不安のほうが大きい中で臨んだ今季は「10番」とキャプテンを受け継いだMF齋藤学を中心に、若さとスピードを前面に押し出す痛快無比なサッカーを繰り出している。序盤戦を2勝1分け1敗で終えた新生マリノスが秘める可能性と、現時点で見えてきた課題を追った。(取材・文:藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

無双状態の背番号「10」。マリノスの新たな旗頭・齋藤学

齋藤学
中村俊輔からマリノスの背番号「10」を受け継いだ齋藤学【写真:Getty Images】

 背番号「10」にボールがわたっただけで、スタンドのボルテージがあがる。左腕にキャプテンマークを巻いた横浜F・マリノスの齋藤学がドリブルをはじめると、スタジアム全体にゴールの予感が充満する。

 久しぶりに現れた、一挙手一投足でファンやサポーターの視線を一身に集められるJリーガー。このオフに「10番」とキャプテンを中村俊輔(現ジュビロ磐田)から受け継いだ26歳は、さらに増した自覚と責任感とを触媒にして、ときに無双状態のパフォーマンスを見せる存在となった。

 たとえば、開幕戦でマリノスに逆転負けを喫した浦和レッズのミハイロ・ペトロヴィッチ監督は、公式会見でこんな言葉を残している。

「マリノスに負けたというよりは、齋藤選手に負けてしまった」

 左サイドに開いた状態で、もっといえばタッチタインを背にしながらボールを受ける。ドリブルに入る刹那に対面の選手が間合いを詰めすぎると、一気にギアを上げられて置き去りにされる。

 前半13分に生まれた今季のJ1第1号ゴール、新外国人のMFダビド・バブンスキーの先制弾は、ドリブルによるカットインでDF森脇良太を手玉に取った齋藤のアシストに導かれていた。

 よほど強烈な残像として、森脇の脳裏に刻まれてしまったのだろう。その後は逆に齋藤との間合いを空けてしまう場面もあった。後半アディショナルタイムにMF前田直輝が決めた決勝ゴールも、自由なスペースを与えられた齋藤のパスから生まれていた。

 慌てて間合いを詰めてくる、あるいは怖がって飛び込めない。相手の心理を見透かしながら、スピードに乗った状態でプレーを的確に選択できる。なおかつ視野を広く保てているから、味方も巧みに使うことができる。開幕2戦でマリノスがあげた6ゴールのうち、齋藤が4つをアシストしたのもうなずける。

 一転して齋藤が右ふくらはぎの違和感で欠場した鹿島アントラーズとの第3節は無得点に終わり、マリノスも初黒星を喫している。指揮を執って3年目になるエリク・モンバエルツ監督は、齋藤の不在を最大の敗因としてあげている。

「我々にスピードと突破力をもたらしてくれる一番の存在は(齋藤)学だ。チームに決定的な影響を及ぼしたひとつの要因だ」

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