“トーキョーの男”になった背番号13
喜ぶことも、謝ることも、相手が川崎フロンターレという、大久保にとって素晴らしい4年間を過ごした特別なクラブだったからこそできたのだろう。「(謝罪を)やっておかなきゃいけないでしょ。それをするために本当に点を取らなきゃいけなかった」と、特別な試合に、特別な想いを胸に臨んでいた。
試合終了後、大久保は歓喜に包まれるサポーターの前で、両手を回して拳を三度突き上げる「シャー」を経験した。FC東京勝利の際に行われる一種の儀式のようなものか。反対側に陣取る川崎フロンターレのサポーターにも挨拶し、感謝を示した。クラブの誇りを貶める行為に対して禊を済ませ、古巣に別れを告げ、本当の意味で大久保嘉人が”トーキョーの男”になった瞬間だった。
「ここで満足していたらダメだし、思ったことは全部、どんどん伝えていきたい。優勝するためには、みんなで喜ぶためには苦しいこともいっぱいありますから。どんどん言っていきます。それで今日みたいな試合をすればチームもみんなついてくるだろうし、地道にやっていきたいと思います」
ただ、多摩川を渡ってライバルクラブへ移籍しようと、大久保の根っこにあるものは変わりない。「ゴール」そして「勝利」。非常にシンプルだ。新たなチームで新たな一歩を踏み出した背番号13は、FC東京が優勝するために、目の前の試合に勝つために貪欲にゴールを狙い続ける。身も心も青赤の”トーキョーの男”として。
(取材・文:舩木渉)
【了】