「普通なら古巣に決めた時は全く喜ばない」(大久保嘉人)
もうこの試合ではないか…。
そんな雰囲気が漂っていた後半アディショナルタイム。待ちわびた瞬間は唐突にやってきた。92分、相手DFのクリアを拾った大久保は、ウタカにボールを預けてゴール前へ走る。パスを受けたナイジェリア人FWは、類い稀な身体能力を生かして厳しい体勢からワンタッチで捌き、ボールは再び大久保のもとへ。
GKチョン・ソンリョンが前に出る。かつてのチームメイトの動きを熟知する大久保は、相手の体が倒れるまで粘り、左にかわしてボールを無人のゴールに流し込んだ。やっと決まった初ゴールだった。
「普通なら古巣に決めた時は全く喜ばない」と語っていた大久保は、この時ばかりは一目散にFC東京サポーターが陣取るゴール裏まで駆け寄り、「ごめん」と両手を合わせた。
「本当に点を取って、マジで謝らなきゃいけないなと思ったので。普通は古巣に決めた時は全く喜ばないですけど、今までのチームなら。そういう時に限ってフロンターレで、(FC東京のサポーターには)ああいうことをしたし、そこは絶対に謝らなきゃいけないなと思っていた」
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