変化するイタリアの戦術トレンド。セリエAから消えた“カテナチオ”
「イタリアでは、戦術が支配を効かせる状態から脱却しつつある。以前は2番は2番の、4番なら4番の、そして9番なら9番の役割に徹することが求められていたが、今ではプレーを構築することがサッカーの中心にある。ナポリやフィオレンティーナ、エンポリやサッスオーロのようなクラブを思い浮かべるが、それらはそういったクラブだ」
昨年1月の『ラ・レプッブリカ』紙上のインタビューで、あのゾーンプレスをミランに持ち込んだアリゴ・サッキはそんなことを言っていた。
これまでイタリアサッカーといえば、戦術的な守備のイメージが強かった。攻撃は2、3人のアタッカーに任せてあとは守備に徹する。しかもそれぞれの選手にはゾーンを維持するため、あるいは相手選手をマークするための厳しいタスクが割り振られていた。そうやって、なりふり構わず守備を固める様子は錠前になぞられ「カテナチオ」と呼ばれた。その伝統の中で攻撃サッカーを展開するチームは少数派だったが、近年はその数が徐々に増えた。
そしてサッキの発言から1年後、その傾向は一層強くなった。今や逆に、カテナチオに徹するクラブを見つけるのは難しい。堅守を武器とするユベントスも、最近はもっぱら攻撃的な選手を多く並べたフォーメーションで戦っている。降格圏に沈む下位チームも攻撃的に戦う。イタリア代表を含め、カテナチオの守備戦術オンリーで戦っているチームなど、もはやセリエAには存在しないのである。
ただしそれは、決して攻撃のために戦術上の縛りをなくした、ということを意味しない。むしろ攻守両面を機能させるために戦術はさらに細分化しており、漫然と戦うチームは通用していない。フランク・デ・ブール監督のもとラインを高く上げたポゼッションサッカーを目指したのはいいが、結果が出ずに解任の憂き目にあった今季序盤のインテルが良い例である。
その戦術的なトレンドとは何か。集約すれば、次の通りになる。