レスターが仕掛けた“現代版”ファイトボール
かつてウェンブリースタジアムのロッカールームで、アウェイチームは青ざめていたという。ここでの試合では、背後からのタックルとGKへのチャージが黙認されていたからだそうだ。絶え間ないプレッシャー、(他国からみれば)乱暴なタックル、ハイクロスの雨……ある著名な英国人記者はイングランドのプレーを「ファイトボール」と評した。
ファイトボールに関して、イングランドは世界一だった。ただ、ゲームがフットボールにスローダウンするとそうではない。イングランド代表監督だったテリー・ヴェナブルズが、相手がイングランドの勢いを「そぎ落とす」ことにすっかり慣れてしまったと指摘していたのは1990年代である。
レスターがセビージャに挑んだのは現代版の「ファイトボール」だ。
絶え間なく相手ボールにプレッシャーをかけ、奪いとったら手間をかけずに攻める。奪った場所が自陣ならロングボールを使って前進、ロストしても再びプレス。球際は激しく、執拗。ゲームのテンポを上げ続けた。
プレミアリーグを制したレスターが戻ってきた。クラウディオ・ラニエリ解任とともに自らの、そしてイングランド・フットボールの原点に回帰した。
逆にいえば、セビージャはゲームをフットボールに着地させることに失敗している。ボールを空中ではなく地面に転がし、正確なパスワークでプレスを回避し、テンポを落とす。少なくとも前半はそれがうまくできなかった。