言うなれば、まさに「カンプ・ノウの悲劇」
2月14日のCLラウンド16、PSG対バルセロナの1stレグでPSGが4-0と快勝したあと、当コラムで『このバルサ戦の夜は、エメリはPSGの指揮官に着任して初めて、枕をいつもよりほんのすこし高くして眠れたのではないか、という気がする』と書いた。
しかし、高くした分、落ちたショックは余計に大きくなってしまった。
1stレグに苦戦したあとでの敗退なら傷口もまだ浅かったが、UEFAさえもが『かつて1stレグに4-0で勝利して次ラウンドに勝ち抜けなかったチームは0』などと”100%”説を銘打ったあとでのこの敗退は、ショックやダメージ、などという言葉では言い表せない。
屈辱、恥、大惨事……フランスのメディアにはありとあらゆるネガティブな単語が並んだ。
翌日のレキップ紙の見出しは、その、”言葉では表せないようなとんでもないこと”を意味する『INQUALIFIABLE』。これは1993年のW杯欧州予選最終戦でブルガリアに試合終了直前に決勝ゴールを入れられ、1-2で敗れて94年のアメリカ大会出場を逃した翌日の紙面と同じものだという。まさに言うなれば『カンプ・ノウの悲劇』だ。
PSGの地元パリジャン紙の翌日の一面は、“バルサを破って準々決勝進出!”を派手に扱おうとしていた目論見が外れて急遽差し替えた、という感じがアリアリの、大統領候補マクロン氏の話題で、PSGの敗退についてはその横でひっそりと報じられていた。
……と、直後はサッカー史に残る大逆転劇についての悲喜こもごもが語られていたが、日が経つにつれ、次第にこの敗戦が意味することについて、冷静な分析がなされ始めている。
まずは、この大失策がカタールのPSG構想に影響するのではないかという問題だ。
試合翌日のレキップTVでも、視聴者アンケートの結果7割以上が「ある」と回答していた。エメリ監督の去就問題もその一部だが、カタールがPSGから撤退、ということもなくはないと多くの人が考えている。
事実アル・ケライフィ会長は、試合の翌日カタールへ飛んだ。以前から決まっていた会合とのことだが、オーナーたちに持ち帰る手土産は予想とはまったく違うものになってしまったから、ミーティングの内容も当然変わるだろう。