試合を重ねるごとに漂ってきた得点の匂い
「チャンスの数で言ったら仙台戦は決定機が3回くらいあったけど、もっと増やしていきたい。そうすれば前線の選手もそんなに気負うことなく、『またチャンスが来る』と思ってプレーしてくれるのかなと」
開幕2試合を終え、川辺はこう述べている。少ない決定機をモノにするのも攻撃陣の仕事だが、ゴールに近づく回数を何度も作り出すことで前線の選手の負担を軽減させたかった。
実際に大宮戦は先制点、追加点以外にも好機はあり、背番号40が果たした役割も大きかった。10分、中盤での川辺のボール奪取をきっかけに、抜け出した太田吉彰がクロスバーをかすめるミドルを放った。53分にはクロスのこぼれをPA手前で拾い、冷静にラストパス。川又のシュートを演出した。
1試合のシュート数も開幕戦7本、第2節が10本、第3節は12本と右肩上がりで伸びている。大宮戦も全てにゴールの可能性があったわけではないが、流れの中からフィニッシュに結びつけるシーンは過去2試合と比べて多かった。
「良かった、勝てて」
サンフレッチェ広島から期限付き移籍3年目を迎える気鋭のMFは、開口一番、安堵感を口にした。両チーム最高の12.365kmを走り切り、23度のスプリントを見せた。数字に表れない貢献ももちろんあるが、この日の川辺の働きは数字が雄弁に物語る。
充実の90分だったはずだが、反省と課題を口にする。
「チャンスの割には点が入っていない。決定機があったので、しっかり決め切りたかった。奪われる回数が多かったのでその分、守備に回る時間もあった。自分たちの守備がいくらいいと言っても、その時間が長ければ長いほど、精神的にもキツくなる。1点先制したから守れたけど、0-0の状況が続くと特にキツくなると思う。奪った後がすぐチャンスだったので仕方ないけど、ミスでスローインとかにしてしまうのではなく、きっちり繋いでいければもっと良かった」
仙台戦後に語ったのが『チャンスの数』なら、大宮戦後に川辺の口から出てきたのは『フィニッシュの精度』だ。試合を重ねるごとに得点の匂いもより漂うようになっているということだろう。