中村俊輔のFK弾を生んだムサエフの積極性
NACK5スタジアムのピッチの至る所に、ムサエフがいた。それが錯覚でないほどの存在感を示した。自陣でファイトしていたかと思えば、次の瞬間には猛烈な勢いでゴールへ走り込む。一人で複数の役を担う彼の存在なくして、大宮戦の勝利はなかった。
中村俊輔のFK弾を巻き戻すと、絶好の位置でファウルを受けたのは元ウズベキスタン代表だった。
始動からキャンプ期間中までは、良くも悪くも“無駄のない”プレーが多かった。中盤の底でパスを受けると近くの味方に素早く預け、自身の持ち場を留守にしない。最終ラインの前で相手を食い止め、セカンドボールを回収し、すぐにパス。ここまでが彼の仕事かのようだった。
しかし、今は隙あらば前に出て行き、攻撃を後押しする。中村俊輔がピッチの各所でボールを受けるのと同じで、ムサエフもまたあらゆる局面に顔を出している。
新たな“相棒”とのコンビはどうなのだろうか。背番号8は英語の猛勉強中で、コミュニケーションはまだ決して円滑とは言えない。しかし、川辺は「お互いにやるべきことは頭に入っている」と問題視していない様子だ。さらに、こうも言っている。
「行く時はガンガン行ってくれるので、自分がバランスを見るようにしている。1試合目より2試合目、2試合目より3試合目と、日を追うごとに良くなっていると思う」
ムサエフとの関係が熟成していく中、川辺のプレーも目を見張るものがあった。
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