香川の「0トップ」はドルトムントの新たなオプションになるか
11分には散漫なパス回しから、マティアス・ギンターがヴェダド・イビセビッチにボールを奪われて、ファーに走り込んだサロモン・カルーにあっさり先制を許した。ドルトムントはヘルタ戦でボール支配率こそ68%を記録したが、1対1の勝率は43%と相手を下回り、主導権を完全に握ったわけではなかった。70分にはミッチェル・ヴァイザーに中央突破を許して、決勝点に繋がるFKを与えてしまう。
もしチーム・コンディションが万全だったら、不用意な失点を避け、もう少しドルトムントらしい連動が見られたかもしれない。そもそも0トップは周囲との連携を軸に相手を崩していく戦術だ。もっとも、トゥヘル監督の0トップは香川がそれに「近い形」と言及したように、例えばヨアヒム・レーヴ監督がドイツ代表で見せるマリオ・ゲッツェの0トップとは、いささか趣を異にするようだ。ヘルタ戦での香川は、味方にスペースを作るためにペナルティエリア近辺を動き回ったわけではなかった。
1-2で敗れたヘルタ戦を、トゥヘル監督は「結果は腹立たしいがパフォーマンスはOKだ」と振り返った。指揮官は“実験”の内容に満足したようである。
今後も香川の0トップがトゥヘル監督の中で重要なオプションとして発展していくのだろうか。
香川自身は、生き残るために、ただ地に足を着けている。
「僕は(ウスマヌ・)デンベレではない。自分は逆に自分の良さがある。みんながそれぞれの特徴を示しているように、僕も自分は自分というのを示していかないといけない」
(取材・文:本田千尋【ベルリン】)
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