震災から6年。「3.11」開幕戦への特別な想い
「私の今までの選手時代も監督経験の中でも、本当に今日は勝ちたい試合で、いままでにはなかった」
福島ユナイテッドFCの田坂和昭監督は、目に涙を溜め、何度も言葉に詰まりながら、一言一言力強く絞り出すように話した。
3月11日、というのは福島ユナイテッドFCにとって特別な日だ。もちろんそれは6年前の「東日本大震災」と「福島第一原発事故」のことを意味する。
そんな1年に一度の特別な日に、2017年のJ3リーグの開幕戦が組まれた。結果は2-0でYSCC横浜に勝利。田坂監督や選手、クラブ関係者、サポーターの「何としても勝つ」という想いが実った。
2011年当時、まだ東北リーグ1部所属だった福島ユナイテッドFCの運命は東日本大震災によって大きく変わった。被災から約1ヶ月後にチームの活動を再開するにあたって7人の選手が退団を決めたため、紅白戦すら難しい人数となり、コーチだった2人を選手登録してリーグに参戦。
それでも福島第一原発から漏れ出した放射能などの影響でホームゲームは福島県内で開催できなくなり、苦しい戦いを強いられた。だが、福島県内6クラブのうち5クラブがリーグ戦参加を断念する中、唯一茨の道を歩む決断をした福島ユナイテッドFCは開幕から10連勝を達成する快進撃を見せ、東北1部初制覇を果たした。
2012年、東北1部連覇を成し遂げた福島ユナイテッドFCは、全国社会人サッカー選手権大会と全国地域サッカーリーグ決勝大会でともに準優勝。翌年はJFLに参戦し、2014年からは新設されたJ3に戦いの場を移している。
これだけを見れば順風満帆に見えるが、2002年にFM福島のアナウンサーだった横田篤氏がJリーグ参入を目指して「福島夢集団」を設立してから、福島ユナイテッドFCは十余年の歴史の中で、震災だけでなくクラブ名の変更や運営会社の経営難など幾多の苦難を乗り越えてきた。