本来の遺伝子から最も遠く離れた日に成し遂げられた偉業
ウルグアイのカバーニがPSGのゴールを決め、スコアが3-1となった時点で、カンプ・ノウを訪れていた多くのソシオやファンたちはスタジアムを立ち去り始めた。逆転を信じていなかった者たちだ。だが彼らの多くは、ネイマールの驚異的な直接FKゴールが引き起こしたスタジアム内の轟音を耳にすると、奇跡の目撃者となるためそれぞれの座席へと戻っていった。
前例のない偉業にカンプ・ノウは熱狂し、感動に打ち震えるサポーターたちはチャンピオンズリーグ優勝を飾ったかのように、有名なランブラス通りにあるカナレタスの泉へと向かった。無数のファンが通りへ繰り出し、車のクラクションを鳴らして歓喜を表していた。
興味深いのは、バルセロナの偉業の中でも最大のもののひとつとなるこの勝利が、クラブがその本来のDNAから最も遠く離れた日に成し遂げられたということだ。
バルサはもはやかつてのように見る者を魅了しないし、かつてのように試合の支配者でもない。だが状況に適応して生き残ることができた。
システムと結果は別物だ。バルサが素晴らしいサッカーをできることは我々全員が知っていた。今では、過去に誰も成し遂げていなかったことを実現させるだけの精神力や闘争心、生き様を持ったクラブであることも知っている。
3シーズン率いてきたクラブを6月30日で去ることになるルイス・エンリケに率いられ、バルサはCL準々決勝を戦う。リーガでも優勝の可能性を残し、コパ・デル・レイでも決勝へ進んでいる。申し分のない状況だ。
(取材・文:トニ・フリエロス(【バルセロナ/スポルト】、協力:江間慎一郎)
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