「他とはちょっと違った歩み方をプラスに考えて、生かしていきたい」(清原翔平)
JFLからスタートを切り、3つの異なるユニフォームに袖を通しながらJ3、J2とステップアップを果たし、ついにはJ1のピッチに立った。8年目にさしかかったここまでのキャリアを長かった、あるいは遠回りをしたと感じているのか。清原は静かに首を横に振った。
「本当に1年1年、目の前のステージで一生懸命やってきた結果だと思うので。他の選手たちと比べることもないですし、自分なりに歩んできた道だといまでは思っています。ただ、1試合ですけど、J1という舞台に出られたことは大きいし、これからにつなげていきたい。
今年30歳になりますけど、20代のうちにいろいろなことを経験できたことはすごくよかった。他の選手はなかなか経験していないと思うし、他とはちょっと違った歩み方をプラスに考えて、生かしていきたい。具体的にはいますぐどうこう、というのは出て来ないんですけど」
清原は周囲に対して、いつかは満員の埼玉スタジアムでプレーしたいという夢も語っていたという。J1デビューと同時にかなえられたのは、決して下を向くことなく努力を積み重ねてきた165センチ、64キロの小さなレフティーに対する、サッカーの神様の粋なご褒美だったのかもしれない。
もちろんJ1デビューも埼玉スタジアムも、もっと大きな夢へ向けた通過点にすぎない。故障離脱中の清武弘嗣や水沼宏太が復帰してくれば、中盤の競争はさらに熾烈なものになる。
「J1で同年代の選手もまだ何人かいるし、そういう選手たちと戦えるのも楽しみですけど、そのためには試合に出続けないと。もっと信頼してもらえる選手になることを意識して、これからも頑張っていきたい」
29分間プレーして、放ったシュートはゼロ。家族が録画してくれたレッズ戦の映像は一生の記念になると同時に、スコアを動かすことなく試合終了を迎えたことで「悔しくて苦い思いをするでしょうね」と清原は苦笑いする。
それでも背番号18が埼玉スタジアムに刻んだ一挙手一投足、何よりも今年30歳になる選手が決してあきらめることなく、愚直に前へ進んできた末にJ1デビューを果たしたという事実は、J2以下のカテゴリーで懸命にプレーする選手たちに大きな夢と刺激を与えるはずだ。
(取材・文:藤江直人)
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