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ヴェンゲル、もはや退任は「潮時」との認識に。「2-10」の惨劇。ファンが真に欲するものとは

アーセナルを率いるアーセン・ヴェンゲル監督は、今季限りでその契約が満了となる。2003/04シーズンには無敗優勝を遂げ、21年間に渡る長期政権を築いた偉人の契約延長を望む声がある一方で、チャンピオンズリーグ(CL)ベスト16でバイエルン相手に2試合合計2-10の歴史的大敗を喫したことで、ヴェンゲル監督の退任を望む声は日に日に強まっている。果たして、現地のファンはこの敗戦に何を思っているのだろうか。(取材・文:山中忍【ロンドン】)

text by 山中忍 photo by Getty Images

今季で契約満了のヴェンゲル監督。バイエルン戦大敗で強まる退任を望む声

ヴェンゲル監督
今季限りで契約満了となるアーセナルのアーセン・ヴェンゲル監督【写真:Getty Images】

 アーセン・ヴェンゲルはアーセナルの域を超えたイングランド・サッカー界の偉人。フランス人監督の功績は、1998年に外国人監督として史上初めて達成したリーグとFAカップの二冠や、2004年に成し遂げた史上2チーム目のリーグ無敗優勝を含む、クラブでの主要タイトル計9冠にとどまらない。

 攻撃的なパスサッカー、科学的な選手の栄養管理、近代的な専用練習施設、経営的観点からも眺めるチーム作りなど、先見の明を持つ指揮官として革命的な影響をサッカーの母国に与えた。

 しかし、そのイングランドではヴェンゲルの「今季限り」を妥当とする見方が日増しに強まっている。契約満了に伴う今季末の退任を求める声は、バイエルン・ミュンヘン相手の5失点大敗に始まり5失点大敗で終わった2月半ばからの3週間で、格段にボリュームを増した。

 CL16強対決での最終スコアは「2-10」。国内紙が「欧州戦2試合合計でイングランド史上最悪の大敗」と報じる結果となった3月7日の2ndレグでは、試合前から数百名単位のファンが「ヴェンゲル退任を望む!」と歌いながらエミレーツ・スタジアムへと向かっていた。

 その数は6万人規模のホームに集まった観衆の100分の1程度に過ぎない。試合終了時のブーイングも、不利な判定を繰り返した審判が主要ターゲットだったと理解できる。

 だが、前回の契約最終年だった3年前にはメディアで「非礼」と窘められた一部ファンの意思表示は、もはや行き過ぎとはみなされなくなった。それどころか、「潮時」として認められるようになっている。

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