「勝者のメンタリティ」の意味
試合開始早々の3分にスアレスが得点を挙げたことも、この状況を生み出すことに拍車をかけた。さらに40分にはクルザワがオウンゴール。ハーフタイムの時点で2戦合計4-2というスコアとなり、PSGの優位性は失われた。
バルサ側も、ハーフタイムの時点で勝利への希望を持ち始めていたはず。カンプ・ノウで4点、5点を獲ることは難しいことではない。
ただ、後半から少し状況を変えたのが、やはりディ・マリアの存在だった。後半から投入されたディ・マリアは、その鋭さでカウンターからバルサに襲いかかった。
50分にPKで3点目を追加したバルサだったが、62分にカバーニのゴールによってアウェイゴールを奪われる。あと3点が必要となったバルサは、この時点ではさすがに希望を失いつつあったはず。
しかし、時計の針が進むにつれて追い詰められていったのはPSGだった。PSGは、前半の45分間で9つだったファウルの数が75分からの15分間で同じ9つを記録してしまう。
この“ファウルトラブル”がネイマールの2得点を生み、セルジ・ロベルトの決勝点も生んだ。ネイマールのFKの場面でも、観てた人々には“入る”という予感があったはず。
サッカーでは、「勝者のメンタリティ」という言葉が数多く聞かれる。しかし、具体的な像を持たないこの言葉について説明を求められ困った経験のある人も少なくはないはず。
でも、今は違う。0-4という試合前から「でも…」という思いを抱かせ、残り5分強の状況から3点を奪ったこの試合を説明すればいい。この奇跡の一戦は、長い歴史の積み重ねが生んだ結果なのかもしれない。
(文:海老沢純一)
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