4点というリードが生んだPSGの不安
そして迎えたカンプ・ノウでの2ndレグ。PSGは4点という大きなアドバンテージを持ちながらも、エメリ監督の心にも、選手たちの心にも「でも…」という思いが残っていたのかもしれない。
「90分間、4点を守り切ればOK」。普通なら、それは難しいミッションではない。しかし、「でも…」という思いがPSGの重心を後ろへと押し下げ、バルサの力を引き出す展開へと導いていった。
1stレグと2ndレグの前半15分までのスタッツを比較してみると、PSGは1stレグではバルサ陣地で46%のプレー割合を記録していたが、2ndレグではわずか20%。ホームとアウェイという違いも大きいが、スコアがクリアな状況では前へと足を運べていたが、4点という“ややセーフティ”なアドバンテージを得たことで、「引く」という選択をしてしまった。
ディ・マリアのベンチスタートも引いた理由の1つだろう。カウンターでは圧倒的な切れ味を発揮するPSGの“牙”とも言えるディ・マリアをベンチ置いた状況では、積極性より消極性が勝ってしまう。
逆にバルサは、前半の15分間で1stレグではわずか26%だった敵陣でのプレー割合が2ndレグでは69%を記録。本来の支配力を発揮するための大きなスペースを得たバルサは徐々にPSGの精神を削っていった。
3-4-3のシステムで敵陣へと押し込むバルサに対して、PSGは大きく後ろへと後退していく。PSGは本来4-3-3のシステムだが、ドラクスラーとモウラの両ウイングは後ろへと押し下げられ、4-5-1という状態となっていった。
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