難航するミランの経営権譲渡交渉。本田の契約解除の余地もない?
ただ現在、実を言うとその道すら危ぶまれている。新経営陣が経営権を取得できるどころか、買収交渉もそのものが頓挫する危機に瀕している。シノ・ユーロップ社は3日までに、買取金の残りである3億2000万ユーロ(総額5億2000万のうち2億ユーロについては前払金としてすでに納入済み)と当座のクラブ運営資金である1億ユーロを準備することになっていたが、複数の資本家グループから2名が離脱したためにそれが困難となり、3月3日までに支払われなかった。
シノ・ユーロップ社のリー・ヨンホン代表は、「1日も早く締結できるよう現在努力している」と発表したが、彼らがこれを完遂できるかどうかに疑いの目が強まっている。
そもそも昨年8月から交渉を開始していた彼らは、中国政府による外貨持ち出し制限の影響もあり、前払金を払いながら支払い期限を2度延期させている。「現在彼らは10日までに新たな1億ユーロという遅延分の弁済金を支払う予定でいるが、それができなければ交渉はそこでストップ。ミランの親会社であるフィニンベスト社はシノ・ユーロップを見限ることになるだろう」とペレガッティ記者は明かした。
以前アメリカ人コンサルタントの仲介人の元でクラブ買収を試みた中国人資本家や、一時は独占交渉権も獲得していたタイ人のビー・テチャウポン氏、他アラブ資本やイタリアの投資家グループが興味を示しているという。
「現状フィニンベストは他の買い手とコンタクトを取ってはいないが、ベルルスコーニの意思はクラブを売ることにある。資金力の乏しさからミランが落ちぶれたことに、一番心を痛めていたのはベルルスコーニに他ならないのだ」(ペレガッティ記者)
買収交渉がまとまらなければ、来季以降を見据えた経営プランの立案はさらに遅れることになる。すっかりチームの顔となったGKジャンルイジ・ドンナルンマにも大型契約を用意し、慰留できるかどうか微妙な状況となった。
そんな混乱の中にあって、MLSに行きたいから契約を解除してくれなどという話を本田サイドが持ち込むことができるのか。この混乱を静かに眺めながら、残り3ヶ月の契約切れを待つ他に道は残されていないようだが…。
(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)
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