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柴崎岳、スペインデビューは3/19が濃厚。緻密に練られた復帰プラン、“忍耐”の先に見える復活の光

text by 舩木渉 photo by Wataru Funaki

中盤のポジション争いは熾烈。まずはデビュー果たし恩返しを

柴崎のネーム入りユニフォーム製作作業真っ最中。左隣には背番号のシートが山のように積まれていた
柴崎のネーム入りユニフォーム製作作業真っ最中。左隣には背番号のシートが山のように積まれていた【写真:舩木渉】

 いまテネリフェは好調で、ポジティブな雰囲気に包まれている。現在10試合負けなしのチームはマルティ監督の下でひとつにまとまっており、練習中もONとOFFのメリハリがよく効いていた。時には笑いながら、集中するときには目の色が変わり、短時間で濃密な練習を行う。

 その中で、これから柴崎はクラブのサポートから徐々に離れて監督に自らをアピールしなければならない。けが人を多く抱えているものの、幸い中盤に負傷離脱者は少なく、どのポジションにも強敵ぞろいだ。

 ボランチであればビトーロやアイトール・サンスといったマルティ監督が重用してきたベテランがしのぎを削り、本職はセンターバックのアルベルト・ヒメネスが守備で存在感を発揮する。まもなく柴崎と同時加入のラシッド・エト=アトマンも復帰してくる。

 攻撃的なポジションではアトレティコ・マドリー所属のサウール・ニゲスの兄アーロン・ニゲスや、地元カナリア諸島出身の若手オマル・ペドロモが定位置を確保しており、主将で柴崎の良き理解者でもあるスソ・サンタナが控える。ラス・パルマスからレンタル移籍中のタイロンも台頭してくるなど、それぞれのポジションで激しい競争が繰り広げられている。

 スペインにおいて居場所を勝ち取るために重要なのは、プレーで実力を見せつけることと、言葉で自分の考えを主張することだ。内向的な性格で知られる柴崎には後者が高い壁になるかもしれない。

 とはいえ、ポジション争いを勝ち抜くには超えなければならない壁でもある。ここからはクラブが用意した傘の下から離れ、その期待に応え恩返ししていかなければならない。

 ファンも新戦力のデビューを心待ちにしている。柴崎のネームと背番号入りユニフォームは予約が殺到している状況だとクラブのオフィシャルショップ店員が話してくれた。

 テネリフェ島の人々は皆、人懐っこく温かい。ピッチ外で困ったことがあれば喜んで助けてくれるはずだ。柴崎は1人で殻にこもらず、気持ちの紐を緩めて頼れるところは頼ってしまえばいい。今は選手としてピッチの中だけに集中し、1試合でもプレーする姿を見せられれば状況は一変する。

 まずは「3月19日」が柴崎にとって一つの大きな目標になる。これは決してゴールではなく出発点にすぎないが、長い助走で勢いをつけ、レウス戦を飛躍のきっかけにしたい。テネリフェの選手たち、スタッフ、フロント、ファン、島民、そして日本のファン…皆が柴崎岳の復活を待っている。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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