仙台にあり、磐田に欠けていた「オアシス」
相手からボールを奪い、素早い攻守の切り替えから一気にゴールを目指す。そうした形は前半、随所に見られた。スイッチを入れたのは中村俊輔だ。21分、斜めに走り相手守備陣の隙間に侵入したアダイウトンにパスを通す。直後の23分には味方の粘りからボールを預かると、ダイレクトで右サイドに展開。走り込んだ川又堅碁が中に持ち替えてシュートを放った。いずれも相手にブロックされ決定打とはならなかったが、手数をかけずにフィニッシュに結びつける意図は感じられた。
しかし、攻め手はそれだけだったとも言える。
素早くゴールに迫ることはでき、好機を生んだCKも速攻から得たものだった。相手3バック両脇のスペースを「前半は突けたと思う」と中村俊輔は振り返る。ただ、元日本代表はあることに気づいていた。
「取った後のパスが、仙台の方が3-4-3ということもあって一回サイドに散らせる、休み所があった。こっちは休み所がない分、サイドバックが持っても縦しか(選択肢が)なくて。後ろからの厚みあるボール回しの部分で、向こうの方が『オアシス』があったかなと」
仙台は左右に振って一息つき、周りに味方がいるため局面で人数をかけてパスを繋ぐことができた。中村俊輔が独特な言い回しで表現した落ち着きどころが、磐田には少なかった。時間の経過と共に前と後ろの距離が離れると、それはさらに顕著になった。