他所と比較にならないほどプレッシャーのきついマルセイユ
“居場所がある”
ここ最近、マルセイユを取材する現地記者からの酒井評で聞かれるのは、いつも同じ、このセリフだ。選手評にはすこぶる厳しいラ・プロヴァンス紙のマリオ・アルバノ記者は、シーズン序盤は酒井について好評価を口にすることは稀だったが、最近では「サカイにはいまやマルセイユに居場所がある。PSG相手の試合でさえ光るプレーを見せていた。十分にリーグアンで通用するレベルの選手だ」と当たり前のように答える。
いまや酒井宏樹は、サポーターや報道陣から、マルセイユの先発イレブンに名前があって当然、と思われる存在になった。
酒井本人は、「ここに居場所があるなんて思っていないです。居場所がないとダメだ、という危機感をもってやっている状態」だと話す。
しかし同時に、自分がいなければ、という自覚もある。3月1日のフランス杯ラウンド16、対モナコ戦では、5バックの右サイドでプレーし、攻守両面で莫大な運動量と激しいボディコンタクトが求められた。カベラが決めた2点目をアシストするなど結果も出したが、フルタイム終了直前に古傷の太ももに違和感を覚え、延長戦突入後の97分に自ら退いた。
「もうちょっとやりたかったですけど、(体が)壊れてしまうのが一番怖いんで。でも次(4日後のロリアン戦)は大丈夫です。明日になれば問題ないので、どんどん動かして……」
『1試合ダメなプレーをすればサッカー選手人生が終わる』と言われるほど、フランス国内でもほかと比べようがないほど選手へのプレッシャーがきつく、フランス人選手でも苦労するといわれるマルセイユ。ここで、アジア人選手で1年目にしてレギュラーポジションを確保しているというのは、実際すごいことだ。
酒井宏樹には、ヨーロッパリーグ出場圏内を目指すマルセイユの勢いに乗って、このまま怪我なくシーズンを戦い抜けてほしい。
(取材・文:小川由紀子【フランス】)
【了】