「彼をできる限り助けたい。テネリフェに住んでいる人はみんな家族」
柴崎の胃腸の問題が最初に伝えたれたのは今月7日のことだった。当時は「テネリフェ島の食べ物が合わないのでは?」などと囁かれたが、ロロさんのお店のように本格的な日本食を味わえる店はある。柴崎もその味には満足しているようだ。
ロロさんは言う。
「私はアヤノ(堂園彩乃、テネリフェ南部のUDグラナディーラ・テネリフェ・エガテサに所属する女子サッカー選手)とはよく連絡を取り合っているのだが、ガクとはまだなんだ。私も彼女と同じように彼をできる限り助けたいと思っている。島の人たち全員がそう考えているはずさ。テネリフェに住んでいる人はみんな家族みたいなものだからね」
クラブからの全面的なサポートだけにとどまらず、柴崎を助けたいという人は多い。ロロさんはもちろん、堂園や、テネリフェ島在住の日本人が筆者に連絡をくれたこともあった。
そしてテネリフェ島にのべ4日間滞在し、人の温かさを身をもって感じた。島の南側に滞在してUDGテネリフェ・エガテサの練習を見学した際、チームの選手や監督、コーチたちが見知らぬ日本人を“アミーゴ”として迎えてくれたのには驚いた。地元の人たちのサッカーにも誘ってくれた。
当然言葉は全くわからない。お互いに拙い英語と身振り手振りでなんとかコミュニケーションをとっていたが、そんな状態でも身構えず飛び込んでいけば歓迎してくれる。別れの時は「また来いよ!」と言ってくれる。スペイン本土にはなかった、どこか島独特の温かさがあった。
柴崎への期待は大きい。テネリフェのオフィシャルショップへ行くと、背番号20のプリントは予約分で在庫切れとのことだった。その場にはたくさんの「GAKU」「20」のシートが置かれていたが、いまそれらを予約されたユニフォームに貼り付ける作業に追われている最中だという。
街中のスーパーマーケットやアジア系の食品店には日本食材が手に入るところもある。クラブだけでなく、在テネリフェの日本人や地元の人々も柴崎を助けたいと強く望み、ピッチでの活躍に期待している。練習以外の時間にもホテルから街へ飛び出せば、意外にも明るい未来が拓けてくるかもしれない。復活へのヒントは助けてくれる人々の想いの中にある。そう思わせてくれるテネリフェでの4日間だった。
(取材・文:舩木渉【テネリフェ】)
【了】