表裏一体の長所と短所…今後の課題は継続性
4人の攻撃と守備の連続性もチームを助けている。リバプールの守備陣は対人戦において強さを発揮する一方で小回りの利かない点が課題として挙げられがちだが、それが目立たなくなるほど“四銃士”の守備における貢献度は高い。
前線でボールを奪われた際には瞬時に切り替え、相手のボールホルダーに最も近い選手から猛然とプレッシャーをかけにいく。DFの位置に到達する前に奪い切ってしまうことがリバプールの守備の基本で、クロップ監督がドルトムント時代に築き上げた“ゲーゲンプレッシング”の精神はイングランドでも受け継がれていると言える。
ただし、リバプールの“四銃士”は、かつてのドルトムントの前線と違って個々の役割が明確に分かれていない。
ブンデスリーガ二連覇を達成したシーズンのドルトムントでは、ロベルト・レバンドフスキがフィニッシャーで、香川真司がそれを背後からサポート。両サイドのヤクブ・ブワシュチコフスキとケビン・グロスクロイツが攻守にハードワークしてバランスをとる役割を果たしていた。
一方、現在のリバプールは前線の4人全員に状況に応じた守備のタスクがあり、ポジションにとらわれない柔軟性と運動能力、判断力などが高い水準で要求されている。
それだけに長所と短所が表裏一体となっているのも事実だ。“四銃士”の誰かが欠けた場合、代役にはダニエル・スターリッジやディボック・オリギが起用されてきた。しかし、彼らは生粋のストライカーであり、最大の持ち味であった前線の流動性や攻守の一体感は失われてしまう。
アーセナル戦でも見られたように、頭をフル回転させながら圧倒的な運動量を実現するサッカーを90分間、あるいは年間を通して続けるのは非常に難しい。今後の課題は観客を魅了した前半45分のサッカーを継続的に見せていくことだが、そのためにはできるだけレベルを落とさずに“四銃士”と同じ役割を果たせる控えを確保することになるだろう。
とはいえ、アーセナルを蹂躙した前半のパフォーマンスは圧倒的だった。コウチーニョら前線の4人の力を最大限に引き出すサッカーがスタンダードになっていけば、タイトルに手が届くチームになっていくはず。プレービジョンを完璧にシンクロさせた“四銃士”がリバプールの未来を創る。そういった意味で今後の指針となる象徴的な一戦だった。
(文:舩木渉)
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