「彼はチームにとって完璧な選手」。指揮官が求めた久保のプレースタイル
一方のヘントは流出した主力の穴埋めに苦しんでいた。ポゾニール記者は昨年夏にスタンダール・リエージュへ移籍してしまったベニト・ラマンと久保の共通点がヘントを動かしたと話す。
「ラマンはスピード豊かでパス能力に長けていた。代えの利かない選手だったので、監督としては狭いスペースでスピードとドリブルを活かせる裕也のような選手がどうしても欲しかった」
両者の思惑が食い違い、夏の移籍は実現しなかった。それでもヘントは久保の動向を注視し続けていた。そして状況が変わるのを待った。
ヘントは昨年12月末までのリーグ戦21試合で9勝5分7位と波に乗り切れず中位をさまよっており、上位6クラブによる優勝決定プレーオフ進出圏内入りを目指して何かを変える必要があった。それこそが久保の獲得だったというわけだ。
ベルギーリーグにはEU圏外国籍選手登録数の制限がないため久保獲得への障害は少なかったが、数多いる外国人の中から「日本人の久保裕也」が選ばれた価値は非常に大きい。またヘントにとってクラブ史上最高額の移籍金を費やした事実からも、その実力への評価が高いことは容易に想像できる。
冬の移籍市場で積極的に動いたヘントは、新守護神ロブレ・カリニッチをはじめ多数の選手を迎え入れた。その中でも久保にかかる期待は並外れている。ハイン・ファンハーゼブルック監督は19日のスタンダール・リエージュ戦を前にした記者会見で久保に求める役割について次のように語っている。
「ユウヤを獲得したのは、2ライン間(相手のDFとMFにできる間のスペース)でプレーできる能力を持った選手を探していたからだ。スペースでボールを受けて仕掛けるか、パスするかを決断するだけでなく、試合を支配するような、極めて素早くフリーになれるスペースに侵入してゴールを決める能力も求めていた。そんなあらゆる要素を兼ね備えた選手を探していた。彼はチームにとって完璧な選手なんだ」