「絶対に獲得したい選手だった」。久保裕也移籍の舞台裏
「ユウヤ! 一緒に写真を撮って!」
「ユウヤ! 今週末も頼むぞ!」
彼が歩くだけで人だかりができ、写真をねだられ、肩を叩かれる。加入からまだ1ヶ月足らずにもかかわらず、すでにファンからの信頼をガッチリつかんでいる。久保裕也はジュピラー・プロリーグ(ベルギー1部)のKAAヘントで最高のスタートを切った。
リーグ優勝の経験もあるベルギーの強豪ヘントにとって、久保はただの補強ではない。長期間追い続けた待望の“ラストピース”だった。日本では最初の報道が出てから短期間でまとまった移籍と見られがちだが、実情は全く違う。
ベルギーの大手紙『HLN』でヘント担当を務めるニールス・ポゾニール記者が久保獲得のいきさつを語ってくれた。
「クラブは昨年の夏からユウヤを獲得しようとしていたんだ。でも、その時はヤングボーイズが放出を拒んだから移籍は実現しなかった。前線に負傷者が続出しているということだった。でも、ヘントとしては絶対に獲得したい選手だったんだ」
この「夏」「負傷者が続出」というキーワードから、ヘントからヤングボーイズに対するオファーが、久保がリオデジャネイロ五輪に日本代表として出場するのを断念せざるをえなかった時期に重なっていたことが推察される。
昨年7月末、ヤングボーイズは負傷者を多く抱えた状況でチャンピオンズリーグ予選3回戦のシャフタール・ドネツク戦に臨んだ。しかし、その試合で新たな負傷者が発生し、久保も五輪出場で長期間チームを離れてしまうと前線の駒が足りない状況に陥ってしまった。代表招集に応じるどころか、放出などもってのほかというわけだ。