10分間の復帰戦は…「“リハビリ頑張りましたご褒美”じゃない」
バイエルン戦からおよそ1ヶ月後の10月2日、ボルシアMG戦の後で内田は奮闘の様子を語った。
「今の所はやれているから、これで行くしかないと。でね、すげー実験だよ、この治療。これが痛くねーんじゃねーか、とか、こうやってやったほうが腫れが引くんじゃないかとか。その連続。正解がない」
永遠に続くかに思われたリハビリで、心は既に折れていた。
「折れてますよー、さすがの内田も(笑)。折れているというか、周りが折れてないね。めっちゃ助かっている。友達もだけど、待ってる。ぶっちゃけ、変な話だけど、待ってくれているから、みんな。だから、もうちょっと頑張れる」
枯渇した涙の代わりに、闘志を振り絞った。ひたすら打ち込む、リハビリの日々。
そして迎えた、ザルツブルク戦。
「さすがに、グラウンドに来て、ユニフォームが自分のロッカーに飾ってあるのを見た時には、おぁ、と思った」
およそ10分間プレーした“復帰戦”を終えた後で、残した言葉。
「今日はもう…『リハビリ頑張りましたご褒美』じゃない」
それは、絶望の闇から這い上がった内田の、心の底から振り絞った咆哮だったのだ。
(取材・文:本田千尋【デュッセルドルフ】)
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