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Jリーグ 8年前

キング・カズの真実。勝つために起用する指揮官。50歳現役もまだ通過点

text by 藤江直人 photo by Getty Images

カズの記録を他の選手が抜くのは「どう考えても無理だな」(川淵三郎)

 実際にキックオフの笛が鳴り響くと、川淵氏はさらに胸を打たれた。ポジションはもちろんフォワード。モロッコ出身で、現在はノルウェー国籍をもつ190センチ、88キロの巨漢ストライカーで、昨シーズンのチーム得点王・イバとのコンビでゴールを狙い続けるだけではなかった。

 後ろの選手たちからの指示に連動して、松本山雅のボランチ、岩間雄大とパウリーニョに何度もプレッシャーをかけてパスコースを遮断。それでもピンチを招くと自陣の深いところにまで戻って守備で体を張り、マイボールになるや懸命にスプリントをかけてカウンターに参加する。

 放ったシュートは後半12分の1本だけに終わった。ペナルティーエリアのやや外側、ゴール正面でパスを受けて右足をすくいあげるように振り抜く。おそらくはループ気味の一撃を狙ったのか。やや当たり損ねのシュートは、松本山雅のGK鈴木智幸に難なくキャッチされた。

 ちょっとした力みもあったのか。直後のカズは思わず苦笑いを浮かべながら、松本山雅の攻撃に備えてポジションを整えている。川淵氏が思わず胸を躍らせたシーンでもあった。

「開幕戦が誕生日という、カズがもっているそういう巡り合わせを考えたら、今日はゴールするんじゃないかと思っていたくらいだからね。一回だけチャンスがあったけど、ちょっと状況がよすぎて、慌てちゃった感じがあったけど、まあぜいたくを言っちゃいかんよね。

 とにかく50歳って、どんな感じでプレーするのかと思っていたけど。前にだけ立っていればいいのに、やっぱり手を抜いちゃいかんということだ。(カズの記録を他の選手が抜くことは)どう考えてもちょっと無理だな。これだけストイックに自分の体を維持して、試合に出るのは本当に難しいことだからね」

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