FC東京を内側から変えつつある「個の力」
ゴールマウスで存在感を放つ林。利き足の左足から放たれる、正確無比なキックでセットプレーのキッカーを務めたDF太田宏介(フィテッセ)。自慢のスピードを左右両サイドでちらつかせ、アントラーズに脅威を与えた永井。そして、大久保はどす黒いと表現してもいいゴールへの執念をこれでもかとまき散らした。
攻守両面を司る高萩を含めて、5人の日本代表経験者を加えた巨大補強はまだ機能しているとは言い難い。それでも、それぞれが体に搭載した「個の力」を存分に発揮することで、スマートさが身上だった昨シーズンまでのFC東京を内側から変えつつある。その象徴が新たに結成されたボランチのコンビとなる。
「今年は失点をしない、ということをキャンプからずっと意識してきた。相手が前に出てきてもしっかり人数をそろえて、チャレンジ&カバーを繰り返せば、そこまで危ないシーンは作られないと思うので。チーム全体として守備意識は高くもっているので、無失点に抑えられたことはすごく自信になったと」
橋本が確かなる手応えを強調すれば、3シーズンぶりにプレーする日本で何を見せたいのかと、海外でもまれた2年間の変化を問われた高萩は照れ笑いしながらかわした。
「うーん、これからのプレーで見つけてください」
キックオフ前の時点の通算成績が1勝4分け10敗。まさに鬼門の地と化していたカシマスタジアムで、実に10年ぶりにもぎ取った価値ある白星が、無限の可能性を秘めた新生・FC東京を加速させる。
(取材・文:藤江直人)
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