「100点ではないが守備だけ取ったら合格点」
だがピンチを迎えた原因を、最終ラインの判断の遅れ、と一つに絞ることはできない。まず、ソウザから松田へのパスが簡単に出されている。川又がソウザにチェックへ行く中、アダイウトンはほとんど棒立ちで、少しずつポジションを上げていく松田への注意が疎かになっている。簡単にサイドにボールが渡ると、SBの宮崎が出て行かざるを得なくなった。すると今度は、水沼宏太を警戒した森下が外に出て行く。そして、大きく広がったCB間を相手ストライカーに付け込まれた。
『コンセプトをやりきる』という視点に立てば、ピッチ上の全選手が徹底しなければならない。小さく見える綻びも、バイタルエリアでは修繕困難になってしまう。反省すべきは個人というよりチーム全体だろう。
とはいえ、磐田は無失点で試合を終えることができた。「自分と(森下)俊の間が少し広かった時は危ないシーンになりかけたけど、それほど大きなピンチもなくできた」と大井は手応えを口にする。名波浩監督は後半終盤、川辺に代えて藤田義明を投入し、手堅く試合を終わらせた。「100点ではないが守備だけ取ったら合格点」と指揮官は選手たちに一定の評価を与えた。
ゴールを奪うためのコンビネーションが完成するまでは、自信を深めつつある守備での奮闘が求められる。得点力アップは大きなテーマで、名波監督がこの課題を放置しておくとは考えられない。自身のアイディアを選手たちに伝え、ピッチで表現できるよう鍛えていくだろう。
そして、しぶとく勝ち点を積み上げるためには失点しないことも重要だ。昇格組と言えど、C大阪の陣容はJ1で上位進出の可能性を秘める。そうした相手と1ポイントを分け合えたのだから、上々の成果とすべきだろう。
磐田の2017シーズンのスタートは、決して悪くない。
(取材・文:青木務)
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