「中央の封鎖」と「外への迅速なスライド」
攻撃のバリエーション増加は今後の選手たちの躍動、名波監督の手腕に期待するとして、守備面の成熟はポジティブに捉えられる。C大阪が前に人数をかけてこなかったのは事実だが、大きな破綻もなく過ごせたことは選手たちの自信になったはずだ。それでも、90分間『鉄壁』を誇ったとは言い難く、何度か危ないシーンがあった。
前半終了間際、C大阪の杉本健勇が低いクロスに飛び込む。大井が足を伸ばして触れると、ボールはポストに直撃した。あわやオウンゴールだったが、相手ストライカーに最後まで食らいついた点を評価すべきだろう。仮にネットが揺れていたとしても、ディフェンスリーダーは責められない。
崩されたかけたシーンとして磐田が最も肝を冷やしたのは、むしろ22分の場面だ。自陣左サイドから松田陸に斜めのパスを通されると、ここに杉本が走り込む。桜の背番号9がトラップミスしたため何も起こらなかったが、このようなシチュエーションを作られ、なおかつ失点していたとしたら、悔やんでも悔やみきれなかっただろう。
大井と森下俊のCBコンビは、距離感を適切に保つことで互いを補完し合う。しかし、この時は2人が離れてしまい、その間を容赦なく突かれた。チームは『中央の封鎖』と『外への迅速なスライド』を約束事としている。鹿児島キャンプでも時間を割いたポイントだ。
守備の隙を狙ってくる相手を前にした時、優先されるべきは中をしっかり閉じること。サイドに釣り出された森下に合わせて、空いたスペースを周囲が埋めなければならない。もしくは、ひとまずサイドを“捨て”、中央のディフェンスに専念する手もあったのではないか。
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